mirage of story
迷いやすい体質。
カイムはもう今ではだいぶ昔にさえ思える、あのシエラの村から旅立つ時の出来事を思い出したのだろう。
逆光で表情は思うように掴めなかったが、心なしか苦い顔をしているような気がした。
ジェイドとは違い、ふざけた感じのない真面目な声がそれを裏付けていた。
「じゃあ、あとで」
「.....う、うん。あとで」
真面目に心配してくれるカイムに複雑な気持ちで返事をしつつ、手を振るシエラ。
その心配を否定が出来ないところが、また悲しい。
そして手を振るシエラに安心したのかまた背を向けてジェイドの後を追って走っていくカイムを、複雑な気持ちの籠もった微笑で見送った。
「――――私も、行こう」
手に持ったバケツを握り直し、シエラは空を見上げた。
夕陽の色に染め上げられた穏やかな雲の流れ。
そしてじんわりと蝕むように迫り上がる、夜の黒い色。
その昼と夜の混ざり合う境に存在する色のコントラストが綺麗で、シエラはその水色の瞳が煌めく。
さて、と。
そろそろ行かなければ。
シエラは神聖な森の空気に肺一杯に吸い込んで、前をむき直して動き始めた。
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