mirage of story









ヒシヒシと踏みしめる土の感触とその足音。
僅かな風がそよぐ度に、サラサラと葉を擦らせて音を奏でる木々。



疑問晴れぬまま、ひたすら歩く森の道。

森の中が静かなので、耳を澄ますと普段なら日常の雑音に掻き消されてしまうような小さな音まで鮮明に聞こえる。





不気味でもなく、逆に心地良い空間なのでいつまでもこうして歩いているのも大して苦ではない。

だけど水を汲みに行く名目がある以上、そんなわけにもいかない。


















......ピチャンッ。

澄ます耳に聞こえてくる溢れる自然の音に、遠くから聞こえる潤いの音が重なる。



微かな音だが、静かな森の中ではそれで充分だった。

耳から感じる水の気配。
それを感じると共に、今まで捉えられなかった水の匂いにシエラは気が付く。










「水の音―――」




ピチャンッ。
一度耳に届いた音は、二度目以降はより鮮明に聞こえる。

もう近くに、水の溜まった場所がある。おそらくそれが、目的の泉。






シエラは歩を止めずに目を凝らす。

覆う緑。
沈みかけた夕陽の光を浴びながらサラサラ揺れる木の葉。





........。
ユラリッ。

その隙間、木の葉のその隙間数メートル先に、一瞬だけ揺れる光が見えた。










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