mirage of story
滴る緑に囲まれて、ひっそりと存在する清らかな水を湛える小さな泉。
森の中、歩いている時に常に感じていた神聖な雰囲気は全て此処から生まれたのだと感じさせる。
ロキが言っていた、かつて此処は竜の住処だったのかもしれないという言葉に、今改めて頷く。
今でも竜がこの森の何処かに身を潜めているのではないか。
なんて、此処を知らない者が聞いたら呆れて笑ってしまうような想像さえ、簡単に沸いてきた。
「此処が、ロキさんが言っていた所ね。
――――凄く、綺麗」
ゴクリッ。
シエラが息を飲む音が響く。
陽はもうだいぶ落ちた。
周りも暗くなってきた。
なのに、この空間は湛える澄んだ水の煌めきで驚くくらい明るい。
本来なら元となる光が無ければ反射し照り返る水面からの光は生まれないはずなのだが、この泉は暗くなった空から僅かな光を寄せ集め水面の美しい光を守っている。
きっと夜になっても、この泉は空に浮かぶ星達や月の光を集めて煌めくのだろう。
きっと雨の日も、この泉は空から降り注ぐ雨粒から輝きを集めて煌めくのだろう。
きっと、外の世界が戦火の闇に包まれていても.......この泉は煌めいているのだろう。
そうシエラは思った。
ッ。
空間に圧倒され、止めた足。
その足は泉の煌めきに引き寄せられて、吸い寄せられるように自然と前へ踏み出していた。
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