mirage of story












「...............そうだった。
早く水を汲んで、カイム達の所に戻らなくちゃ」



暫く水と戯れていたシエラ。

そんな彼女は空っぽになった自分の手と、視線の端に入った水を汲むために持ってきたバケツに自分が此処へ来た理由を思い出す。








カランッ。

濡れた手で中身の入ってない軽いバケツを持ち上げる。
乾いた金属の音がする。



それを斜めに水の中へと沈めると、だんだんと手に伝わる重みが大きくなる。

バケツの中に水が侵入し、暫くして一定の所で止まった。
シエラはその様子を見て、そのバケツを引き上げる。








タプンッ。
持ち上げたその反動で、バケツの中の水が大きく揺らぐ。
思いの外、それは重くてシエラはそれを持ちよろめきながら立ち上がる。


右へフラフラ。
左へフラフラ。
よろめく姿は実に不安定で、下手をすれば泉の中に落ちてしまいそうで。
シエラの細い身体がバケツの重さに弄ばれる。















「よいしょっ.....と!」



よろめく身体にどうにか体勢を立て直そうと、力を入れる。

グッとバケツの取っ手を握る手と腕を、飛び跳ねるような勢いをつけて持ち上げた。
タプンッと水が揺れ、少しだけ地面に零れた。









.
< 840 / 1,238 >

この作品をシェア

pagetop