mirage of story

















".................では、君の中に残るその最後の記憶――――その日その時に戻って確かめてみるとしよう。

君が君の父上のことを思い出せぬ理由。
それから彼が君達を置いて出て行った理由も、振り返れば見えてくるだろう。



そして先程君が垣間見た君の生まれたあの日、世界が変わってしまったあの日。
君と君の父上に何があったのか。何が起こったのかも"








そう言う水竜の声がして、また俺の周りの世界がグラリと歪みまた違う世界が俺の意志とは関係なしにどんどん描かれていく。



周りの白に様々な色が帯び始め、白とは対照的な暗い色の情景。
土色。暗い空の色。

世界が歪み始めて数秒後、完全に世界が切り替わって俺は目に映る光景に息の止まる思いがした。


















「これは―――あの日の」



夢にまで見た、あの日の光景。

夢で見たものと今目の前に広がるもの。
変わりはほとんど無いが、夢を見ている時よりも自分自身の意識がはっきりしているせいか現実味がある。






雲に覆われ曇った空からは、時間帯を読み取ることは出来ない。
更には殺風景な周りの情景も重なり、此処が何処であるかすらも定かでない。



だけど、だけど此処は確実にあの日俺が父さんを追い掛けていた場所。
夢にも見たあの場所。

それは間違いない事実だ。









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