mirage of story
父さん。
父さん、父さん!
胸の内が一気に熱くなる。
熱くなる感情を胸に、声に出してその名を叫ぼうとした。
............。
だが叫ぼうと開いた俺の口は、幼い俺に歩み寄った父さんの顔を前に、何も言葉が出てこなくなった。
言葉どころか息さえも、詰まり止まってしまうかと思った。
夢で見たものと何違わぬ光景。
幼い俺は意識がなく見えてはいないはずだったが、夢で知っていたこの光景。
哀しそうな父さんの姿。父さんの声。
知っている。この光景を。
だが、違う。違うのだ。
明らかに、あの夢とは違う決定的に違うものが今俺の目の前にある。
「貴方は...........」
夢にまで見た、求め続けたその人。
俺の大切な家族。父さん。
求めてた。
ずっと、会いたかった。
―――――そのはずなのに。
そのはずだったのに.......どうして?
.