mirage of story










父さん。
父さん、父さん!

胸の内が一気に熱くなる。



熱くなる感情を胸に、声に出してその名を叫ぼうとした。

















............。
だが叫ぼうと開いた俺の口は、幼い俺に歩み寄った父さんの顔を前に、何も言葉が出てこなくなった。
言葉どころか息さえも、詰まり止まってしまうかと思った。







夢で見たものと何違わぬ光景。
幼い俺は意識がなく見えてはいないはずだったが、夢で知っていたこの光景。


哀しそうな父さんの姿。父さんの声。

知っている。この光景を。




だが、違う。違うのだ。
明らかに、あの夢とは違う決定的に違うものが今俺の目の前にある。





















「貴方は...........」





夢にまで見た、求め続けたその人。
俺の大切な家族。父さん。




求めてた。
ずっと、会いたかった。

―――――そのはずなのに。
そのはずだったのに.......どうして?









.
< 892 / 1,238 >

この作品をシェア

pagetop