mirage of story












駆ける。駆ける。
駆ける.....駆け巡る。










「―――ウオォォアァアッ!」




敵も味方も怯んでしまうような鋭い叫びと、ライルの手に煌めく刃の禍々しい光。
獣のような雄叫びと共に、ライルはその戦いの中へと突っ込んだ。









「加勢に来た!

相手に怯まず斬り込めぇっ!
勝機は我々.....正義を貫き戦う俺達魔族に!」



ウオォォッ!
叫ぶライルの声に、一瞬唖然としていた魔族達が競うように叫び始める。

均衡状態だった戦況が魔族の攻勢に揺らいだ。
ライルは勢いのままに、魔族達はそれに続くように敵に斬り掛かる。











ワアァァアッ。

ライルの加勢。一気に激しさを増す魔族達に、反乱軍の人間達も負けじと応戦。
戦は激化する。





斬り合いぶつかり合う金属音。
叫び喚く人の怒号。
土を蹴る音、ドサリと土の上に倒れ込む音。

手が二つ、足が二つ。
見掛けは同じ人である二つの種族が、相手を殺すために武器を取る戦場の声。















「今が攻め時だ、人間共を切り倒せ!
行けぇえ―――ッ!」


「魔族共を食い止める!
武器を構え迎え撃てぇっ!」





血を分け合ったはずの、魔族と人間。

それなのに何故、人というものは殺し合うのか。
傷付け合うのか。


争い合って得るものなど、本当は何もないと知っているはずなのに。
何故愚かな歴史を繰り返し、血に濡れた歴史を塗り重ねるのか。








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