mirage of story











「................他の戦場も、こんな―――」





どちらが勝ったかすらも定かではないようなこの場所で、ライルは振り返り遠くを見て呟く。


広い戦場。
何も戦っているのは此処だけじゃない。
例え此処がライル達が制しても、他の所の戦況によって結果は大きく変わる。






争いには犠牲は付き物。
ライルだって軍人だ、それくらいは痛いほど承知の上だ。

だが.....関わるのは人な死なのだ。
そう簡単に割り切れるはずもなく、ライルは血で汚れた手で服の上から胸の辺りを押さえる。



ドクンッ。
心臓の鼓動がする。

死んでしまえば、この今まで当たり前のように刻まれてきた鼓動も無くなるのだと想像し、ライルは身を震った。





















(死ぬのは、怖くはない。怖くなどない。

.........ルシアスの仇を果たすことが出来るなら、こんな命惜しくなんてない。
怖いのは―――その目的を果たせずに死ぬことだ)




ザンッ。
目を閉じ、決意を胸に込め剣を大地に突き立てた。

その傍らにはもう動かぬ人形と化した敵味方も分からない屍が無数にあって、突き立てられた剣がまるで死者を弔う墓標のように見えた。
この大地に出来た大きな墓場に、ライルは数秒黙祷を捧げた。














「まだ戦いは終わってない........行くぞ」



黙祷の後。
突き立てた剣をまた握り締めて一思いに抜き去ると、目を見開き湖に背を向け大地の向こうを見る。



多分まだこの向こうでは戦闘が続いているはず。
兵達が頑張って命懸けで戦っているはずだ。

隊長である自分が、いつまでも此処でこうしている訳にはいかない。
例え身体が思うようには、もう動けなくても。









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