mirage of story










それにまだ、本当の目的は果たしてない。

この場所には、居なかった。
.......だからきっと、この広い戦場の何処か此処では無い場所に居るはずだ。





まだ居ないのかもしれない。
でも必ず、彼女はこの戦場に現れる。

決定的な理由は無いが確信はある。
直感がその時がもう本当にすぐそこにまで来ていると告げる。















ライルは合図をして、姿の見えない馬を呼ぶ。

―――ッ。
すると遠くから、怯えたように恐る恐るこちらへと歩いてくる馬の姿が見えた。








「おいで」



ライルはそんな様子の馬に優しい声で呼び掛けた。


怯えるのも無理はない。

馬だって此処に居たくて居るんじゃない、人の勝手で連れて来られたのだから。
怯える馬を情けないと叱るのではなくて、その怯えを少しでも落ち着かせてやることが大切だ。





ヒヒーンッ。

そんなライルの想いが伝わったのか、馬は怖ず怖ずしながらもゆっくりと近付いて来る。




ゆっくり一歩ずつ近付いて、手が届きそうな所まで来た馬の鼻筋を撫でようと手を伸ばしたライル。

だがその瞬間。
馬は何故か突然に空を仰ぎ見、その手は届かずにただ宙を切った。








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