mirage of story
「どうした?」
突然に顔を上げた馬の丸い目は一点、空の向こうを見つめている。
........空に、何かあるのか?
馬の様子に当然浮かぶ疑問。
カッ―――。
馬が、一歩後退った。
青いはずの空を見て、何かに怯えたように.....。
後退る馬の蹄が大地を擦り、僅かに土埃を大気に散らす。
空気がほんの少しだけ濁る。
濁る空気が上へと舞い上がっていく。
それを追うように、ライルの青い視線もゆっくりと空の先へと向けられた。
「..........何もない」
見上げた先には空の青さが広がるばかり。
何の変わりもない。
何もない。
なら、何故馬はこんなに怯えた目をしているのか。
ライルは空に目を凝らすがやはり空以外は何も見えはしなくて、怪訝そうに顔を歪める。
「思い過ごし.....だったか?」
そう思い、視線を戻そうとフッと見ていた一点を下へ逸らす。
――――ッ。
何かが、おかしかった。
視線を逸らしたのは、何の意識もない行為だった。
だがその意識ない行為は些細な異変に感づき、意識を持つ。
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