mirage of story










今まで無かったのに、何か気配がするのだ。

その気配は自分のものでもなく、怯える馬のものでもなくて、はたまた大地に転がるつい先程前まで生者だった死者のものでもない。




新たな気配。
何処から湧いてきたか、それすら分からない唐突に現れた気配。


得体の知れない何か。
下へと下げる視線、その気配を感じて緊張が走る。
敵かとも思ったが敵意は感じられない。
かといって味方でもない。











――――ッ。

視線を下げる程に、気配はその濃さを増す。
元々無意識だったその行為を止められることも出来なくて、緊張感増すままにライルは身体の為すがまま。





下がる。落ちる。
そしてその視線の端に、何処かで見覚えのある........オレンジがかった茶色。

風に、舞い靡くオレンジ。

















「なっ......!」



捜し焦がれたもの。
愛という甘い感情からではない、憎しみという苦い感情の。






























「貴方との―――決着を、つけにきました」





唐突に現れた気配は言う。

ライルが好きで嫌いな、愛して憎むオレンジの髪......そして澄んだ水色の眼差し。
ルシアスと同じそれを纏った、世界で一番憎しみの感情を持つ彼女が。








「..........全て、此処で終わらせましょう」



彼女が。
―――シエラが。

魔族人間関係なく入り乱れる屍が支配する変わり果てた大地の上に、何処から現れたかも分からない。


だが、確かに彼女はそこに存在した。
その小さな身体に強い想いを宿らせて、たった一人で。








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