【完】無自覚な誘惑。〜俺だけを見てよ、センパイ〜
「大丈夫、です……!私、自分で持ちますっ……!」
すでに重たい袋を2つも持たせてしまっているのに、これ以上負担を増やすわけにはいかない。
みんな持ってくれてるんだから、私だってひとつくらい……
「…………落とされたら困るんで、持ちます……」
私の方を見ずに、歩きながらそう言った和泉ん。
「で、でも……」
「……別に、2個でも3個でも変わりませんから」
和泉くんは、スタスタと早足に前を歩いて行ってしまって、置いてけぼりの私は、その背中を見つめることしか出来なかった。
……どうしてなんだろう。
和泉くんは、いつも私を助けてくれる。
……なんて、言い方おかしいかな……
本当に優しい人なんだと思う。だから、困っている人がいたら、自然と手を差し伸べられる人なのかもしれない。