【完】無自覚な誘惑。〜俺だけを見てよ、センパイ〜
そんなところもかっこよくて、心臓は否応無く高鳴ってしまう。
もう、ドキドキしたく、ないのに……
これ以上和泉くんで、頭の中がいっぱいになっちゃいけないのにっ……。
胸をぎゅっと抑え、目をきつく瞑った。
落ち着け、私……っ。
「……珍し」
「ーーえ?」
隣から聞こえた独り言のようなものに、慌てて顔を上げる。
健太くんが、離れていく和泉くんの背中を見ながら、珍しいものを見るような目を向けていた。
私の視線に気づいたのか、健太くんは顔を真っ赤にして、頭を左右に振った。
「あ……い、いえっ、あいつってこういうことする奴だったっけと思って……」
あいつって……和泉くんの、ことだよね……?
「き、気にしないでくださいっ……!さ、か、帰りましょっか……?」