【完】無自覚な誘惑。〜俺だけを見てよ、センパイ〜
食堂に来るまでの間、たくさんの部員さんたちとすれ違った。
「ここらへんコンビニあったっけ?」
「柴原に頼んで夜食にパンでも買ってきてもらおうぜ」
「空腹からの夜練はきつすぎるわ」
一体、何があったんだろう……?
やっと食堂について、中を見る。
すると、食堂の中から異臭がした。
ご飯が焦げたような臭いと、混ぜちゃいけないものを混ぜたような臭いに、もしかしたら……と、さっき部員さん達が言っていた言葉を思い出す。
夕ご飯……上手く出来なかったのかな……?
私が倒れて、ほかの人たちに任せちゃったばかりに……凄く悪いことをしてしまったっ……。
一体、誰が作ったんだろう……?
あとでごめんなさいと、代わりにしてくれたお礼を言っておかなきゃ。
そんなことを考えながら覗いた室内に、数人の人影が。
じっと見つめて確認すると、いたのは健太くん、佐倉先輩、マネージャーさんたち、そして……
——和泉くんの姿があった。