マリッジリング〜絶対に、渡さない〜

『我慢?』

そう聞き返してからその言葉の意味に気付くと、途端に顔が熱くなった。

『せっかくいいとこだったのに、ごめんな』

『う…うん』


十年も夫婦をやっているのに何で今さら恥ずかしくなってるんだろう。

ついさっきまで触れ合っていたはずなのに…目を合わせられないほど照れくさくて、大地の顔を真っ直ぐに見られない。


『とりあえず、今日は早いけどすぐ出なきゃいけなくなって』

『うん…』

『続きしたいけど、俺もめちゃくちゃ我慢してるから。さっきの続きは夜まで待ってて』


そう言われ、慌てて口を開く。

『…わ、わかった』


すると大地はクスッと笑い、私のおでこに優しくキスを落とした。
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