俺様外科医と偽装結婚いたします


「もしかして、銀之助さんの誕生日パーティーって、どこかの大きな会場を貸し切って行われたりするの?……私てっきり、もう少しアットホームなものかと」


へたり込む私の様子に苦笑しつつ差し出された環さんの手へと、何も考えずに自分の手を重ね置いた瞬間、不敵に笑いかけられた。


「あぁ。船上パーティーだと聞いてる」


彼にぐいと力強く手を引かれ、私は唖然としたまま立ち上がる。

さすが大病院の院長。凡人とは違う。

驚きと感心で言葉を失っていると、からからとハンガーラックを引いて、店員さんがやって来た。


「実は先ほど、久郷院長からお電話をいただきまして……選ばれたドレスに似合うスーツも新調せよ、と」


言葉通り、ハンガーラックにスーツが何着かかかっている。


「俺も? いいよ、面倒くさい。俺は適当に……」

「着るだけ着たら良いじゃない!」


乗り気じゃない環さんをその場に留めるように彼の両腕をぽんぽんと叩いて、すぐさま私はくるりと踵を返した。

そして先ほど彼が座っていたソファーへと深く腰掛け、足を組む。


「今度は私が採点してあげる」


満面の笑みでそう宣言すると、環さんが「は?」と動揺交じりに声を発し、店員さんたちもくすくすと笑う。

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