俺様外科医と偽装結婚いたします

込み上げてきた感情のまま最後まで言い切ったけれど、唖然として表情を強張らせている環さんを見て切なさが募り出す。


「環さんとまた会いたいって、そう思ってしまう私は馬鹿げていますか?」


馬鹿げているかなんて、聞くまでもない。

少し記憶を掘り起こせば、今彼は私と仕方なく一緒にいるということくらい容易に想像つく。

私が自分に特別な気持ちを抱きつつあると知って、環さんはどう思っただろうか。

連れてくるんじゃなかったと後悔の念に苛まれているかもしれないし、何を血迷っているのかと私に対して苛立ちをも感じているかもしれない。

こちらに向かってそっと伸ばされた手にびくりと肩を反応させると、「咲良」と困惑気味な環さんの声が響いた。

硬い声音に、これまで自分にかけられてきた彼の冷たい言葉たちが次々と呼び起こされていく。

反発していたから跳ね返してこられたけれど、彼に気持ちが移り始めてしまった今はもう簡単に割り切れない。

冷たく突き放されたら、悔しさよりも悲しさが勝ってしばらく尾を引いてしまいそうな気がする。

自分の気持ちの変化が急に怖くなり、右足が半歩後退した。

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