俺様外科医と偽装結婚いたします
視界が涙で滲み始めた時、私をじっと見つめていた環さんの口元に柔らかな笑みが広がっていった。
「馬鹿げているなんて思わない。だからそんなに怯えた顔で俺を見ないでくれ」
思いがけない返答に不意打ちを食らい、今度は私が目を大きく見開いてしまった。
「いや……そんな顔を咲良にさせているのは、他でもない俺自身だな。すまない」
拒絶ではなく、私の言葉を受け止め、温かく返してくれたことに、心がじわり熱くなっていく。
停止していた環さんの指先が再び上昇し、私の頬にかすかに触れた。
伝わってきた温かさに鼓動が高鳴り、期待で胸がいっぱいになっていく。
少なくとも、私たちの関係はここで終わらない。この先もずっと……できればよりよい形で続くといいのに。
そんな願いを思い描いた時、私たちのすぐそばから拍手が上がった。
「いやぁ。参った参った。冗談じゃなくて本当の話だったのか」
下品な笑みを顔に貼り付けて歩み寄ってくる男性に、私はハッと息を飲む。
「……な、成木さん」