俺様外科医と偽装結婚いたします

すぐ目の前で足を止めた彼からお酒の香りが漂ってくる。よく見ればほんのりと赤ら顔だ。

そんな彼の様子が私の中にある過去の重苦しい記憶を呼び起こし、嫌悪感が膨らんでいく。

しかめっ面で凝視していると、成木さんが不機嫌そうに鼻を鳴らして私との距離を埋めるように大きく一歩踏み出してきた。

咄嗟に身構えた瞬間、環さんに腕を引かれた。そのまま環さんの身体の後ろへと私は移動する。

しかしホッとする余裕など与えてもらえなかった。すぐさま環さんの身体の向こう側から、成木さんが面白くない顔でこちらを覗き込んでくる。

無理矢理私の傍へ進み出て来ようとする彼を邪魔するように、環さんも右へ左へと歩を刻む。

その身を盾にして、環さんが私を守ってくれている。そう感じて、胸が熱くなっていく。


「彼女になにか用ですか?」


呆れ気味の問いかけとうんざりといったため息。そんな環さんの態度に成木さんがむっと眉根を寄せた。


「咲良の顔を見たら、昔が懐かしくなってな。あぁ、あの頃はよかったな。咲良は俺に惚れ込んでたから、なんでもハイハイって言うこと聞くし」

「成木さん、やめて!」


声を荒げて口を挟むと、成木さんからニヤリと笑いかけられ、ぞくりと背筋が寒くなった。

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