俺様外科医と偽装結婚いたします
成木さんの囁きに私もギクリとさせられる。
たまらず「もうやめて!」と二人の間に割って入ろうとしたけれど、成木さんに手で大きく振り払われ、グラスからわずかにこぼれ落ちた烏龍茶が手にかかった。
それを見た環さんが、持っていた自分のグラスを無言で私に押し付けてきた。何も言わずにそれを受け取ると、ほどなくして成木さんが環さんに再び絡みだす。
「ほら、図星だって顔してますよ。結局君も俺も中身は大して変わらない。今はともかく、昔はけっこうやんちゃだったって聞いてま……いてっ」
環さんが意気揚々と喋っていた成木さんの手を掴み、自分の肩から引き離す。そのまま力を抜くことなく環さんに手を捻られて、痛みを訴えるように成木さんが呻いた。
「何すんだよ!」
「俺に気安く触れるとどうなるかまでは聞かなかったのか?」
言い返したいような眼差しを環さんに向けるも、成木さんは息も絶え絶えに苦痛を訴えることしかできなかった。
ハラハラしながふたりを見つめていたけれど、足を止めてこちらに注目する人々が現れ始めたことに気がつき、私は「……環さん」と小さく彼を呼ぶ。