俺様外科医と偽装結婚いたします
すると環さんは小さくため息をつき、軽く突き飛ばす形で成木さんを解放する。
このまま立ち去ってほしい。そんな願いを込めて、その場に両膝をついた成木さんに視線を落とすと、すぐに彼の視線が上昇した。
「咲良! こいつだけはやめておけ! こいつと比べたら、俺なんてまだ可愛い方だ」
怒りに満ちた目がギラリとした光を放つ。
向けられた憤りに飲み込まれそうになるのを堪えるように、私はグラスを持つ手にぎゅっと力を込める。
「そうは思わない。私は私が信じられる言葉だけを受け止めるから。だからもうあなたの言葉には振り回されたりしない」
私の言葉は成木さんには生意気に聞こえたのだろう。
低く唸るように「咲良」と名を吐き捨てられて思わず身体をすくめた時、環さんが静かに一歩進んだ。
そして、成木さんのすぐ目の前でしゃがみこみ、襟元を乱暴に掴みあげる。
「咲良はもう、お前とはなんの関係もない。俺の女だ。馴れ馴れしく呼ぶな」
環さんの宣告は威圧的で冷酷に響いた。成木さんは言葉を紡げず、唇を震わせている。
逆に私の鼓動はどんどん速くなっていく。はっきりと届いた“俺の女だ”という言葉に、のぼせてしまいそうなくらいに一気に頬が熱くなっていく。