俺様外科医と偽装結婚いたします
「あんたは男を見る目がないようだから、私が咲良にぴったりの男を見つけてあげるって言い始めたの。最初は慰めの気持ちもあったんだろうけど、次第に相手探しに躍起になっちゃって」
お祖母ちゃんの温かな気持ちは嬉しかったけれど、次第にその思いが重荷になっていったのも事実だ。
でもそのおかげで環さんとの縁を得ることができた。
この先別々の道を進むことになっても、今こうして彼と共有している時間は私にとってかけがえのない思い出になる。
しみじみと、お祖母ちゃんにはもっと感謝しなくちゃなと感じていると、環さんがかすかに笑った。
「お互い、頭の上がらない相手がいるみたいだな」
「環さんにもいるの? 相手は誰?」
「祖父さんだよ」
思わず「銀之助さん?」と繰り返し確認してしまった。彼は口元に穏やかな笑みをたたえて首肯する。
「昨日、あいつが言ってたこと覚えてるか? 俺が昔やんちゃだったって」
「……あぁ確かにそんなこと言ってたかも」
それは真実なのかと眼差しで問いかけると、環さんは空いている手で前髪をくしゃりとかき上げた。
「高校のころまではやさぐれてて、生きることに対して投げやりになってた。喧嘩を吹っ掛けられて殴り合いとかしょっちゅうしてた」