俺様外科医と偽装結婚いたします
「食事に誘ってもなかなか乗ってこないあの久郷先生が店に来てたぐらいだから、デートとか何回もして関係はそれなりに深まってるんでしょ? 前よりも本人を知って今は……もっと好きになったのよね?」
尋問されている気分になり顔がこわばってしまった。
それほどまでに私たちのことが気になって仕方ないのだろうかと疑問が浮かびつつも、私はその質問に素直に答えた。
「うん。私ね、環さんのことどんどん好きになってる」
大切に言葉を紡いだあと菫さんを見てわずかに目を見張る。そして苦笑いをした。
「顔が驚いてるけど」
「正直その通り。だって冷徹ドクターって言われてるあの久郷先生だよ? 冷たいだけでなくて他人に厳しいから、咲良も絶対に嫌な思いをさせられてるって思ってた」
「そういうところもあるけど、環さんはそれだけじゃないよ。熱い一面だってあるし」
彼がいかにクールな性格かは身をもって経験済みである。けれど、彼の内側に触れるたびに心が惹きつけられるのを止めることはできなかった。
気がつけば環さんのことばかり考えている。この胸の中にある彼への大きな想いは恋心以外のなにものでもない。
ふふふと笑っていると、菫さんが小さなため息を落とした。