俺様外科医と偽装結婚いたします
突然の態度の変化に、マンションから出てきたふたりの姿を思い出さずにはいられなかった。
いったいどんな関係なの? 菫さんも環さんが好き? 心の中では私を邪魔だと思ってる?
問いかけられぬたくさんの疑問が心を締め付けていく。
どうして打ち明けてくれないの? 私が……環さんを好きだと知ってしまったから?
無言のまま二階から三階へと繋がるエスカレーターへ足を運んでいく菫さんの腕を、気がつけば掴んでいた。
「菫さん」
すれ違って関係がこじれて憎み合うことしかできなくなる前に、向き合いたい。
解決できるかなんて分からない、激しくぶつかり合ってしまう可能性だってある。
けれど、嫌な思い出にならないようにできる限りのことはしたい。
驚きの表情で肩越しに私を見ている菫さんへと話を切り出すべく言葉を探していると、「咲良?」とよく知っている声が近くで響いた。
ハッとして掴んでいた菫さんの腕を放す。
「た、環さん」
すぐそばに白衣姿の環さんが立っていた。彼は逆に三階から二階へとエスカレーターで降りてきたようだった。
さっきまで彼の姿を探していたというのに、このタイミングで現れたことに大きく動揺する。