俺様外科医と偽装結婚いたします

からかうような笑みを浮かべていた環さんが、ふっと視線を外した。そしてわずかに目を大きくさせる。


「……祖父さん」


私も慌てて彼の視線を辿る。看護師さんたちのそばで、銀之助さんと白衣を着た男性が足を止めてこちらをみている。

きゅっと繋いでいる彼の手に力が込められたのを感じ、私は環さんへと視線を戻す。彼もまた銀之助さんと同じように緊張の面持ちを相手を向けていた。

均衡を打ち崩すように、銀之助さんがこちらに一歩を進み出た。

そばに立っていた男性が自分に着いてくるのを感じたのか、銀之助さんは振り返ることもせずに手だけ軽く掲げて背後の彼に制止を促す。

銀之助さんを迎えるように環さんが立ち上がり、すぐに私も彼に倣って椅子から腰を上げる。

目の前で銀之助さんが立ち止まった。そして口を開くよりも先に、繋いだままの私たちの手へと視線を落とした。

鋭く突き刺さった眼差しに、身体が僅かにすくみ上る。

昨日切り捨てたはずの私がまだこうして環さんの隣にいることを不快に思ったのではと、気まずさだけでなく怯えまで心に芽生えた。

とっさに手を離そうとしたけれど、逆に環さんに握り直されてしまった。

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