俺様外科医と偽装結婚いたします
「不安でひとり泣いていたらどうしようって考えたら居ても立っても居られなくなって、手が空いてすぐに咲良の姿を探した。譲れないものができたからこれ以上は無理だ。彼女だけは失いたくない」
環さんが感情を露わに言葉を続け、銀之助さんは息をのんでその様子を見つめる。私は気持ちは一緒だと強く思いながら、しっかりと環さんの手を握り締めた。
「ごめん。結婚に関してだけは祖父さんの望みを叶えてあげられない。咲良以外の女となんて考えられないんだ。俺は彼女と結婚したい」
胸がジワリと温かくなる。
感極まって「環さん」と呼びかけると、彼が少し照れた様子で笑いかけてくる。思い出したように恥ずかしさがこみ上げてきて、私もはにかんだ笑みを返した。
「……こんなに早く効果が出るなんて」
唖然としていた銀之助さんが、突然「ふふっ」と小さな笑い声を響かせた。
先程まで険しい面持ちだったのに、なぜか嬉しそうに顔を綻ばせている。態度が豹変したことに戸惑いを隠せないまま、私は環さんと再び顔を見合わせた。
銀之助さんが大きなため息を吐き出した。それは明らかに安堵のため息だった。
「すまなかったね。実は岩坪くんから話を聞いて、環の気持ちを試しておくべきだと思ったんだ」
「……どういうことだよ」