俺様外科医と偽装結婚いたします
一呼吸置いてから、銀之助さんが私へと顔を向ける。眼差しにいつもの優しさが広がっていった。
「環の心を溶かしてくれる温かな女性を……と考えた時、咲良さんの顔が頭に浮かんできた。咲良さんは祖母さんにどこか雰囲気が似ていてね、私のお気に入りだったからかな」
照れながらそう言った銀之助さんは環さんそっくりで、私はついつい笑顔になる。
「船内で環が咲良さんを庇ったと聞いて、このままふたりが結婚してくれたらと心が踊ってしまったよ。けれど岩坪くんから、環が咲良さんに本気でなければ咲良さんが不幸になってしまうと言われてね、それは困ると焦ってしまった」
銀之助さんが私と環さんの腕に優しく触れた。
「最後の最後まで、私のわがままで振り回してしまって悪かったね。君たちふたりの幸せが私の本当の望みだよ」
じっと環さんを見つめる銀之助さんの瞳は真剣さそのもので、その眼差しを受け止める環さんもまた表情に緊張感を漂わせていく。
「環、咲良さんを必ず幸せにしなさい」
「分かってる」