俺様外科医と偽装結婚いたします
気乗りしていなかったのに、ショーケースに並ぶ宝石のようなフルーツを乗せたケーキたちを目にした瞬間、「美味しそう!」と声が出てしまった。
「いらっしゃいませ」と声をかけてくれた店員が運んでいるイチゴのパフェも、見た目はオーソドックスではあるけれど確実に美味しいだろうという予想が簡単についた。
ついさっきイタリアンレストランで食事をしているというのに、お腹がいっぱいだったことすら忘れて何を食べようかとワクワクしている自分がいる。
案内に来た店員が「何名様ですか?」と声をかけてくる。返事をしようとした瞬間、環さんがなぜか「……いえ」と言葉を濁した。
飛び出した返答に思わず彼の顔を凝視してしまったけれど、店内へと探すような視線を向ける環さんの様子で店員は理解したようだった。「こちらです」と私たちを席に案内しようとする。
意味がわからぬまま連れてこられた四人がけの席には、先客がいた。
近づいていくと、並んで座っていた川元さんと菫さんがふたりそろってこちらへと顔を向ける。
「こんばんは!」と爽やかに挨拶してきた川元さんにぎこちなく頭を下げて、その隣にいる菫さんへと視線を移動させる。
彼女は気まずそうな表情を浮かべて私を見つめていた。