俺様外科医と偽装結婚いたします
変な誤解を前もって阻止するかのように無関係であることを環さんが強調すると、川元さんが嘆くように続けた。
自分の早とちりを心苦しく思っていると「お待たせいたしました」と店員がやってきて、モンブランの乗ったお皿を私の前に置いた。
私はまだ何も頼んでいない。
これは菫さんのではないかと目で訴えかけるも、彼女は緊張感の残る顔で私を見つめ返してくるだけだった。
キャラメルソースのかかったパンケーキにチョコレートケーキ、苺のタルトや抹茶のアイスクリーム。それから先ほど見かけた苺のパフェが時間を空けずに次々と運ばれてきて、私の前にずらりと並べられていく。
「……あの。これはいったい」
なぜ自分のところにだけ集中しているのかも分からなくて戸惑っていると、菫さんが両手を合わせて必死の形相で私を拝んできた。
「お願い、許して! 好きなだけ食べて良いから、機嫌なおして!」
私は瞬きを繰り返して菫を見つめる。
次第に心に温かいものが広がり、自分の口元が綻び出すのを感じた。
静かにスプーンを手に取り、モンブランのクリームをすくい上げる。
ここは甘いもので誤魔化されておこう。
「……美味しい」
ぱくりと口に含んだあと微笑むと、菫さんが泣きそうな顔になる。
そもそも菫さんに対して怒ってなどいないし、許す許さないなんていう気持ちもない。
緊張が解けて場が和むと、会話もいつも通り弾み出す。