フェイク☆マリッジ 〜ただいまセレブな街で偽装結婚しています!〜 【Berry’s Cafe Edition】

彼らの対面に据えられた一人掛けのソファに座っていたわたしは、思わず居住まいを正した。

「実は、作家の神宮寺(じんぐうじ) タケル先生のベストセラー小説『小鳥遊(たかなし)家の籠の小鳥は逃げない』を我が局でテレビドラマ化することになりまして……」

【東京の郊外で暮らす、一見、何の変哲もないように見える小鳥遊家は、実は法律上のつながりはあるものの、だれ一人として血のつながりがなかった……】

そんな家族の春夏秋冬を、人気作家・神宮寺 タケル独特の透明感ある文体でみずみずしく描いたその本は、出版されるやいなやベストセラーとなり社会現象にもなった。

「あら、確かすぐにテレビドラマ化されて続編は映画になって公開されませんでしたか?」

わたしは東氏に尋ねた。

——小説は読んでないけど、ドラマと映画は観たわよ。

「そうです。出版直後に他局でドラマ化が決まり、その後映画にもなりました。
ところが、主演が原作とは異なる登場人物に設定された上にストーリーも改変されてしまって、原作者の神宮寺先生としてはかなり不本意だったそうです」

チーフプロデューサー(P)の加藤氏が代わりに言い添える。

そういえば、原作の主人公は小鳥遊家の息子なのに、ドラマ&映画での主演が彼の義姉に代わってしまったと言って、原作ファンがSNSで騒いでいたのを思い出した。


——だけど、それって……

わたしはソファの端に佇む、すっかりオーラを消した「本来の」風間を見た。

膝の上に置いた一眼レフのカメラを手持ち無沙汰に指で撫でているその姿は……

「俳優・風間 優雅」ではなく、まさしく本名の風間 優雅(ひろまさ)だった。


——ねぇ、あなたが突然結婚した相手……

女優の八坂(やさか) 今日子(きょうこ)が……

自分が出演するなら「主役じゃなきゃイヤだ」と各方面にゴリ押しして、無理やり変更させて主演に居座ったんじゃなかったっけ?
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