フェイク☆マリッジ 〜ただいまセレブな街で偽装結婚しています!〜 【Berry’s Cafe Edition】
「な、な、なんですってぇっ⁉︎」
わたしは叫んだ。
その当時、江戸屋「継承権第一位」のわたしの兄は高飛びしていた英国から帰国して、しれっと病院や企業に勤務していた。
——確か、産業医をしていた会社で今の奥さん……麻琴さんに出逢ったのよね。
あのクールぶってスカした兄がプライドをかなぐり捨てて猛アタックしたそうなのだが、その際に「江戸屋」の創業家に縁づくのが畏れ多いとかなんとか言われて、かなり苦戦したらしい。
また「第二位」の従兄は、京都の大学で学究生活をしているのをいいことに、江戸時代の文献からの資料集めで訪れたのがきっかけとなって付き合いはじめたという出版社勤務の彼女には、出自のことは何も告げぬまま、しれっと結婚したと聞いている。
さらに「第三位」の従弟に至っては、なんと彼女だったご令嬢の家が経営する自動制御機器のメーカーの後継者に自ら立候補して入社し、慌てふためく親戚一同を顧みることなくしれっと入籍した挙句、その後現在も絶賛海外赴任中なのだ。
どいつもこいつも、そんなに老舗百貨店を継ぐのがイヤなのか⁉︎というくらいの逃げっぷりである。
——まさか、パパの「触手」が風間にまで伸びていたとは……
「経営者」として冷静沈着な判断はお手の物であるはずの父が、風間に江戸屋への入社を勧めたのは……何もわたしと交際して結婚したがっている相手という理由だけではないはずだ。
彼の学歴が及第点だったのに加えて……いや、それよりも……芸能界での「カリスマ性」による「集客力」を期待してのことだと思う。
「客寄せパンダ」と揶揄されるかもしれないけれども、斜陽と言われて久しい百貨店業界にとって話題性はじゅうぶんである。
——そういえば、ドラマで若手起業家の役を演っていたっけ?
その期のドラマでは、最高視聴率を獲っていたように記憶している。
それにしても……江戸屋の「後継者探し」への父の執念が怖ろしすぎる……
「それで……あなたは、父になんて答えたの?」
わたしの問いに、風間はすっと目を伏せた。
「すぐには返事できないから、しばらく考えさせてほしいって答えたよ。
そしたら、『一週間だけなら待とう』って言われて時間をもらった」