フェイク☆マリッジ 〜ただいまセレブな街で偽装結婚しています!〜 【Berry’s Cafe Edition】

「『政略結婚の末の偽装結婚』って話……おまえは否定しないんだな?」

わたしがウソのつけない性質(たち)だと熟知している風間が、鋭いところを突いてきた。

「江戸屋は無事、大坂百貨店と合併したんだろ?
政略結婚の目的はじゅうぶん果たせたんだから、もう離婚してもいいんじゃないか?」

——えっ?

「だったらもう偽装結婚を続けてまで、おまえがこれ以上『家』の犠牲になることはないんじゃないか?」


——確かに、小笠原という「後継者」は決まったけれども……

もともと、大坂百貨店を継ぐのが宿命であった人だから後継者としては申し分ない。

小笠原であれば合併した新生・大坂江戸屋百貨店を背負ったうえで、さらに発展させていけるだろう。

小笠原の方も離婚したあとは、今度こそ「好きな人」と結婚して……


「だけど……」

わたしの目が行き場を失って泳ぐ。

自然と、彼の首にかけられたカメラにぶつかった。

その一眼レフ(カメラ)の上部には「Leica(ライカ) R8」と刻まれていた。

わたしのモデル名「LEIKA」と一文字違いの「R」シリーズのカメラだ。

——あのときのカメラ、まだ愛用していたんだ……


「あの頃」の彼との思い出が……

鮮烈に、わたしの心に押し寄せてきた。
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