フェイク☆マリッジ 〜ただいまセレブな街で偽装結婚しています!〜 【Berry’s Cafe Edition】
ようやく、青山夫妻の前では初めて小笠原がわたしに声をかけた。
「そろそろ『神宮寺先生』がいらっしゃる頃かな?……挨拶にでも行くか」
わたしはこくりと肯いた。
——神宮寺 タケルって週刊誌とかでしか見たことないけど、どんな人なんだろ?
「小笠原、おまえ……」
青山氏がしみじみとつぶやいた。
「おれたちには政略結婚みたいなことって言ってたくせに、案外『普通の結婚』してるんだな」
——ど、どこがっ⁉︎
わたしは思わず目を見開いて、青山氏をしげしげとガン見してしまった。
——わたし、今の今まで小笠原からガン無視されてましたけどっ⁉︎
絶賛政略結婚の上の契約結婚の果ての真っ白い偽装結婚の真っ最中ですけどっ⁉︎
すると、それまで鉄仮面のように表情筋を動かしていなかった彼が、ほんの一瞬だけ笑った。
それはまるで、人懐っこそうな、いたずらっ子みたいな笑顔だった。
——な、なに……このギャップ⁉︎
もし彼が既婚者じゃなかったら、ずっきゅーん!とわたしの心臓にキューピットの矢がブッ刺さっただろう。
「おい、青山、いい加減なことぬかすな」
対照的に、小笠原はかなりイラついていた。
——まぁ、わたしにとっては標準仕様だけどね。
家の中のいつもの彼、そのものだ。
「そうか?」
青山氏は不敵な目で小笠原を見返す。
「おまえとは、ずいぶんと長い付き合いになるがな。
他人に対してあまりにも調子が良すぎて、まるで紙のように薄っぺらく見えるほど愛想の良いおまえが、そんなぞんざいな態度を取るのを初めて見たぞ」
「確かに……こんな無愛想な小笠原さんを見たのは初めてだわ」
稍さんも夫の意見に同意した。
ところが——
「でもね、いくら奥様に心を許して甘えているにしたって、その態度はあり得ない!」