フェイク☆マリッジ 〜ただいまセレブな街で偽装結婚しています!〜 【Berry’s Cafe Edition】

——ちょ、ちょっと、稍さん?

「こんなに美しくてモデルさんまでやっていらっしゃるから、もっと高飛車な方かなって勝手に思っていたけど、全然そんなことなくて……
一歩下がって状況を把握しながら見極めて、その場に応じたご挨拶をきちっとされる聡明さも持ち合わせていらっしゃって……」

——あのう……それってわたしのこと?

だったら、ずいぶんと買い被っていらっしゃるのではなくて?

「彼女こそ、わたしが見習うべき上流階級の素敵な奥様だと思います」

めちゃくちゃ、こっ()ずかしいんだけれどもっ!


「——わかった、わかった。おれが悪かったよ」

小笠原が欧米人のように両手をあげた。ホールドアップだ。

「では、ややちゃんがそこまでベタ褒めする我が『素敵な奥様』……お手をどうぞ」

小笠原がおどけた顔をして、右肘をわたしに向ける。エスコートを再開したいらしい。

青山夫妻の手前拒むわけにもいかなくて、わたしは再度彼の肘に左手を預けた。


「……じゃあ、そのうち遊びに行くよ。大きくなったななちゃんにも会いたいしな」

小笠原は青山夫妻に向けて、さわやかに告げた。

「おう、ななは保育園に通う歳になったぞ」

「へぇ、おれが上海に赴任する前はまだ赤ちゃんだったのになぁ……あ、そうだ!
帰国した今は妻——レイカの祖父母が生前に暮らしていたベリが丘のノースタウンにある洋館に住んでいるんだけど、よかったらななちゃんを連れて今度遊びにおいでよ」

「えっ、住民専用のゲートがあるっていう高級住宅街のノースタウンに⁉︎ ぜひぜひ伺います!」

稍さんが歓声を上げる。

「レイカ、そのときはイギリス人のばあちゃん直伝の英国料理を振る舞ってくれないか?」

——何なの? この突然のキャラ変……⁉︎


「え、ええ……わたしの手料理で良ければ……」

わたしは笑顔が引き攣らないように注意しながら、アルカイックスマイルを浮かべて応じた。

「ややちゃん、味の方はおれが保証するよ」

小笠原は欧米人のようにパチンとウィンクした。どっちが英国の血を引くクォーターかわからない。

——そりゃあ、あなたがわたしの味付けを直すのだから、いくらでも保証できるでしょうよっ!

そのとき、ふと気づいた。


そういえば——

小笠原に『レイカ』って名前呼びされたの、初めてかも……?

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