フェイク☆マリッジ 〜ただいまセレブな街で偽装結婚しています!〜 【Berry’s Cafe Edition】
「……いったい、何のことかしら?」
わたしは彼女を見据えて、悠然と尋ねた。
「惚けないでないでほしいわ!
あなた……小笠原室長にノースタウンのお宅にわたしを入れないでほしいって言ったんでしょう⁉︎」
ベリガ丘のノースタウンに入るには、住民にしか与えられていない「ゲートキー」で開門しないといけないのだが、武尊さんとの取り決めで彼女には決して渡さないことになっていた。
——この人だけじゃなくて、なぜか長澤 典士もだけどね……
わたしが武田 かおるを、そして武尊さんがテンシを「出禁」に指名したのだ。
それにしても、神宮寺 タケル先生のパーティまでやってきたとか思えば、一応「小笠原室長の妻」であるわたしにこんな不躾なことをするなんて……
やっぱり、出禁にしたのは大正解だったようだ。
——そういえば、最近テンシとは会うどころか連絡すら取ってないなぁ……元気かしら?
まぁ、便りがないってことは元気な証なんでしょうけれど。
「室長との三年間——上海店での激務を一番近くで支えてきたのは……わたしなのに……
せっかく帰国して、これからますますお力になりたいと思っている矢先に……
ご自宅に出入りできないなんて、送迎も不可能じゃないですか!」
「あら、夫は自分で運転して通勤しているけれども、別に困ってる様子はないわよ?」
「わたしが困っているんです!
今までは運転手の送迎だったから、後部座席でその日の確認事項のすり合わせができていたのに……
出社されてからの室長は秒刻みのスケジュールで、わたしとゆっくり話す時間なんてないんです。
おかげで最近の室長は、わたしの手を通すことなく、いつの間にかご自身でリスケまでされている始末です」
——なんだ、自分でできるんじゃーん!
それに、なんとなく……武尊さんの性格なら、他人の手を借りるよりも自分でちゃちゃっとやった方が却って楽だと思うような気がする。
——まだ、よくは理解っていないけど……
「いいですか、あなたがやったことは、秘書の業務妨害以外の何物でもないんです!
第一、途中で室長に事故でも起こったらどうするんですか⁉︎」