フェイク☆マリッジ 〜ただいまセレブな街で偽装結婚しています!〜 【Berry’s Cafe Edition】
「——お話はそれだけね。では、わたしはパーティ会場に戻らさせてもらうわね」
わたしは裾の長いドレスを翻し、バンケットルームの方へフェラガモの先を向ける。
せいぜい膝下丈のワンピースしか着られない「秘書」である武田 かおるに見せつけるためだ。
ほんっとうに、くだらない無意味で無駄なお話に時間を浪費してしまった。
——武尊さん、取引先の女性たちからまた「アルコール突撃」を受けてるんじゃないかしら?
だったら、一刻も早く戻らなければいけない。
「なんのために……」
うつむいた彼女が何やらぶつぶつ言っている。
「なるべくあの女と室長と会わさないようにスケジュール調整したり……室長の耳にあの女の悪い噂を入れたり……
この三年間、なるべく早くあの女と離婚させるために必死で仕向けてきたのに……」
そして、どんどん精気を失くして項垂れていく。
「やっぱり、あのとき……
中国からの来日客のせいで……室長が帰国以来滞在していたホテルから出なければならなかったときに……ちゃんと代わりのホテルをリザーブできていれば……
いいえ、室長があの女のノースタウンの家に同居するって言ったときに……あのときにちゃんと阻止できていれば……」
——何ですって?
不自然なまでに「夫」と接点がなかったのは、こいつの仕業だったのか……
——って言うか、「そんなこと」ばかりにかまけてて「秘書のお仕事」はちゃんとできているのかしら……?
同業者にもいるけど「やってる感」を出してる割には、肝心の「本来の仕事」ができてないのよね。
もしかしたら彼女、YOMITA自動車 名古屋本社 社長の「力」による縁故入社かもしれない。
——まぁ、「サラリーマン社長」の「力」の見せどころって、せいぜいそのくらいかも……?
ともあれ、ここから先のバンケットルームには「武尊さんのパートナー」ではない「単なる秘書」の彼女が入る権利はない。
——あ、そうそう!
わたしがなぜややこしい取締役会や株主総会、そしてうちの社外取締役のメンバーのことなどを知っているかと言うと……
実は、わたし自身が大坂江戸屋百貨店の「社外取締役」だからだ。