フェイク☆マリッジ 〜ただいまセレブな街で偽装結婚しています!〜 【Berry’s Cafe Edition】
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ようやくバンケットルームへ戻ったわたしは、周囲を見渡して「夫」を探す。
——取引先の女性たちからの「アルコール突撃」にさらされてなければいいんだけれども……
前方に武尊さんらしき後ろ姿が見えた。
彼はシャンパングラスを手にした人と話をしていたが、それは年若い男性でその周りに女性はいなかった。
——あら、よかった。「襲撃」されてないわ。
ホッとしたわたしは、優雅な足取りでそちらへ歩いて行く。
近づいてきたのが気配がわかったのか、彼がわたしの方へ振り返った。
「……あぁ、やっと戻って来たか」
——いったい、誰のせいで足止めされてたと思ってんのよっ!
一瞬、危うく般若の形相になりかける。
だけど、彼の側に見知らぬ男性がいるのだ。そんな顔はできない。
——いや、世間では結構「見知られた」お顔なんだけどね。
一時期、週刊誌なんかでお顔だけはよく拝見したものだが、こんなふうに実際に会うのは初めてだ。
「紹介するよ。おれの従弟の……本田 拓真だ」
男性は「作家の神宮寺 タケル」だった。
「本日は出版記念パーティにお招きくださりありがとうございます。
武尊さんの妻の小笠原 レイカです。
神宮寺先生、新作のご出版おめでとうございます」
わたしは心のうちをおくびにも出さず、本日身につけたばかりの「女優スマイル」でにこやかに微笑んだ。
先刻まであんなにこっ恥ずかしかった『武尊さん』呼びのはずなのに……
はからずも武田 かおるの前で連発したからだろうか、今やすっかり慣れていた。
——うれしい誤算ね。
あの女でもわたしに役に立つことがあるなんて!