フェイク☆マリッジ 〜ただいまセレブな街で偽装結婚しています!〜 【Berry’s Cafe Edition】

゜゚・*:.。. .。.:*・゜゚・*:.。. .。.:*・゜゚


ようやくバンケットルームへ戻ったわたしは、周囲を見渡して「夫」を探す。

——取引先の女性たちからの「アルコール突撃」にさらされてなければいいんだけれども……

前方に武尊さんらしき後ろ姿が見えた。

彼はシャンパングラスを手にした人と話をしていたが、それは年若い男性でその周りに女性はいなかった。

——あら、よかった。「襲撃」されてないわ。

ホッとしたわたしは、優雅な足取りでそちらへ歩いて行く。

近づいてきたのが気配がわかったのか、彼がわたしの方へ振り返った。


「……あぁ、やっと戻って来たか」

——いったい、誰のせいで足止めされてたと思ってんのよっ!

一瞬、危うく般若の形相になりかける。

だけど、彼の側に見知らぬ男性がいるのだ。そんな顔はできない。

——いや、世間では結構「見知られた」お顔なんだけどね。

一時期、週刊誌なんかでお顔だけはよく拝見したものだが、こんなふうに実際に会うのは初めてだ。


「紹介するよ。おれの従弟(いとこ)の……本田 拓真だ」

男性は「作家の神宮寺 タケル」だった。


「本日は出版記念パーティにお招きくださりありがとうございます。
武尊さんの妻の小笠原 レイカです。
神宮寺先生、新作のご出版おめでとうございます」

わたしは心のうちをおくびにも出さず、本日身につけたばかりの「女優スマイル」でにこやかに微笑んだ。

先刻(さっき)まであんなにこっ恥ずかしかった『武尊さん』呼びのはずなのに……

はからずも武田 かおるの前で連発したからだろうか、今やすっかり慣れていた。

——うれしい誤算ね。

あの(ひと)でもわたしに役に立つことがあるなんて!

< 153 / 167 >

この作品をシェア

pagetop