フェイク☆マリッジ 〜ただいまセレブな街で偽装結婚しています!〜 【Berry’s Cafe Edition】

「君にとって、有価証券を現金化するより手っ取り早い方法を教えてやろう。
改めて確認するが、君が祖父母から受け継いだ不動産は『家』だったよな?」

どういう意図だか皆目わからないけれど、わたしは素直に肯いた。

その「家」は、ベリが丘駅の北側へと伸びる櫻坂を上がった高台に広がる高級住宅街「ノースエリア」にある。

抜け目のない兄は遺産を現金と有価証券をもらって、それを元手にして一族から大反対されつつも医学部に進んでその後英国へと留学(高跳び)した。

それに対してわたしは、祖父母が最晩年に住んでいた洋館と有価証券をもらった。

けれども、家事一切からっきしのわたしに一軒家の管理などできるはずもなく、有価証券の運用とともに実家に丸投げしていた。

——だって、家事をしなくていいホテル暮らしの方が快適だもん。


「まったくもって不本意極まりないが、君とは戸籍の上だけとはいえ『夫婦』であることには違いないからな。
だったら……その家に、一緒に住むのはどうだ?」

——えええええぇーっ⁉︎

「秘書が早急に手配すると言っても、そんなに早くには見つからないだろう。
おれは中国から帰国して以来続くホテル暮らしを一刻も早くやめて、落ち着いて仕事ができる家に移りたいんだ」

「か、勝手に話を進めないでよっ!」

あわてるわたしに構うことなく、小笠原は続けた。


「君がその家を提供してくれるのであれば、おれが家賃代わりに生活費を負担しよう。
生活能力のない君にとっては、けっして悪い話ではないと思うがな」
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