フェイク☆マリッジ 〜ただいまセレブな街で偽装結婚しています!〜 【Berry’s Cafe Edition】

「あ、テンシ、ちょっと聞いてよ!
『夫』が帰国したからって、パパがホテル代とかの生活費を出してくれなくなっちゃったのよ‼︎
いきなりひどいと思わないっ⁉︎」

『おまえの親父さんも、とうとう堪忍袋の緒が切れたか』

テンシはスマホの向こうで苦笑していた。

「仕方ないからさ、ベリが丘のサウスエリアのホテルを出て、おじいちゃまたちから受け継いだノースエリアのお家に移ったの」

二階建てのその洋館は、明治時代に来日した西洋人が避暑地として好んだ軽井沢で英国人によって建てられた田舎家(コテージ)風の別荘を、祖父が買い取ってわざわざこの地に移築したものだ。

わたしは玄関からすぐの応接間(シッティングルーム)で、祖母が生前お気に入りだったロッキングチェアに座って通話をしていた。

飛騨の「名工」と言われる家具職人に特注したそれは、祖母の心ゆくまで調整して作られたあと彼女が天に召されるまでずっと大事に使っていた唯一無二のチェアだ。


『でも、おまえに一軒家の管理なんてできるのかよ?
しかも、重要文化財(じゅうぶん)並みの明治の洋館だぞ。
……あっ、まさか……いくらおれが不動産会社に勤務してるからって、丸投げするつもりじゃないだろうな⁉︎』

「そんなことしないわよ。
心配しなくても大丈夫よ。面倒な管理は『夫』がしてくれることになったから」

実際にこの洋館を見た小笠原()は、とてもじゃないけどわたし()に任せっきりにするわけにはいかないと思ったのだろう。

すぐさまうちの父に連絡して注意事項を聞き、管理に関する業者はそのまま継続することと相成(あいな)った。

——そこかしこに「年代物」があるからね。

おかげでわたしは掃除することも免除(というか禁止)されて楽ちんだ、ラッキー!
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