フェイク☆マリッジ 〜ただいまセレブな街で偽装結婚しています!〜 【Berry’s Cafe Edition】

『……はぁ?』

テンシの呆れた口調が、それを通り越して脱力していた。

『——まさかの「ノロケ」かよ……』

「ち、ち、違うわよっ! 何言ってんのよっ‼︎」

わたしはロッキングチェアから伸び上がって、声を限りに叫んだ。

『うっせぇな……急に大声出すなよ』

テンシの声が急に遠くなった。

どうやら耳を押さえているようだ。

「と、とにかくねっ、言ったからね!
うちの家の前を通っても中に入ってくるんじゃないわよ!」

『はいはい、わかったよ。
おれは、おまえみたいに新婚さんの家に押しかけるような無粋なことはしないから安心しな』

近くに戻ってきたテンシの声が心底うんざりしたように聞こえる。

「ちょっとっ、わたしがいつ新婚さんの家に押しかけたって言うのよ⁉︎」

——失礼なっ、聞き捨てならないわ!


すると、テンシがフンッと鼻で笑った。

『新婚さんっていうか……あいつが婚約パーティを開いた直後に、おまえがあいつの家に押しかけて行ったことがあったじゃないか』

『あいつ』とはわたしの初カレのことだ。

「あぁ、わたしがこの結婚がイヤで実家から逃げ回ってた時のことね。
でも、あいつの婚約者さんは快く受け入れてくれたわよ?
それに、そもそもテンシが『あいつに匿ってもらえ』ってアドバイスしてくれたんじゃないの」

あれは本当に緊急事態で、他に方法がなくどうしようもなかったのだ。

「本気でそう思ってるのか?
……おめでたいヤツだな」

テンシは深ーいため息を吐いた。

「そういえば、あいつの家もノースエリアだったよな?
——もう押しかけるんじゃないぞ」

「ええっ、家にいてもヒマだから、近くだし顔でも出しに行こうかなって思ってたのに」

これを機に、彼らとちょくちょく会えたらいいなと思っているのに。

テンシもそうだけど、やっぱり学生時代からの友達って気を遣わずに「素」のままで付き合えるから楽ちんだ。

テンシも初カレも、仕事やパーティなどのオフィシャルな場面では超メタボ級の猫を被っていて別人28号なのだ。

——わたしたちの友情に、感謝!
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