フェイク☆マリッジ 〜ただいまセレブな街で偽装結婚しています!〜 【Berry’s Cafe Edition】
5コール目でマネージャーが出た。
『——お待たせしました、LEIKAさん。
どうされましたか?』
「村田さん、ひさしぶり。今大丈夫かしら?」
『はい、大丈夫ですけど……
お仕事が入ったら、Go◯gleカレンダーでスケジュールを共有する手筈となっていますが、今月はあいにく……』
申し訳なさそうに話す彼女を遮った。
「わかってるわ、いいのよ」
ここ何年か担当してくれているマネージャーの村田 史緒は、わたしが所属するモデル事務所に新卒で就職して早々の配属だったから、最初は「大丈夫かなぁ?」と不安だった。
しかし、今では着実にマネジメントを行えるようになっている。
——ただし、わたし以外には、だけどね。
彼女はわたしの他にも二十代の雑誌モデルの子を二人を担当していて、そのどちらにもガッチリ専属契約を取ってきていた。
「あのね、先刻L◯NEで送った写真のことなんだけど……」
『あ、すいません! 今、外にいるので……すぐに確認しますね』
おそらく、わたし以外のどちらかの撮影に帯同しているのだろう。
『……うわーっ、かわいいっ、このお家!
LEIKAさん、海外に行かれたんですか?』
送付した写真を見るなり、村田のテンションが上がった。
「まさか、思いっきり日本よ。
わたしが祖父母から相続したベリが丘のノースエリアにある家なんだけど、単身赴任していた夫が帰国したから住むことになったのよ」
わたしはロッキングチェアにゆらゆら揺られながら言った。
『へぇ、そうなんですね。
ご主人がやっと帰国されたんだ。良かったですね!』
——まーったく、良いことなんてないのよ。
今までの超快適なホテル暮らしができなくなっちゃったんだから。
『それで、ノースエリアのこんな素敵な洋館にご主人とお二人でお住まいになるんてすか?
すごーい!めちゃくちゃ憧れます!』
さらにテンションが上がる。
「それでね、その写真をわたしの公式のSNSにアップしてもらいたいだけど……いいかしら?」
一応、仕事の告知用に「@LEIKA_official」のアカウントがあるのだが、あいにく開店休業中なので「休眠状態」なのだ。
たとえこんな写真でも「生存確認」にはなるだろう。
『あっ、それはいいかも!
でも、社長に許可をもらわないといけませんが……たぶん大丈夫だと思いますよ』
事務所との契約で勝手にSNSで発信してはいけないことになっている。
このご時世、何がきっかけで炎上騒ぎになるかしれないので、わたしにとっては事務所に丸投げして管理してもらえるほうが楽ちんだ。
「そう、じゃあ社長によろしく伝えてね」
そう言って、わたしはマネージャーとの通話を終えた。