フェイク☆マリッジ 〜ただいまセレブな街で偽装結婚しています!〜 【Berry’s Cafe Edition】
昨今の「レトルト食品」の充実ぶりには、本当にびっくりした。
——だって、行列ができるレストランのシェフの味がこんなに簡単に食べられるのよっ⁉︎
もちろんお店の味をそのまんま、というわけにはいかないけど、それでもかなり美味しい!
——伊達にホテル暮らしの外食三昧の生活をしてきたわけじゃないからね。
しかも、我が大坂江戸屋百貨店のオンラインショップで自宅に居ながらにして手に入るのだ!
わたしの料理の腕などカケラも期待していない「夫」の小笠原が教えてくれた。
家の管理のこともそうだけど、どうやらフットワークが軽そうだ。
——もしかしたら……割と「使えるヤツ」かもしれない。
同じベリが丘であっても買い物などのためにノースエリアのゲートを出てサウスエリアへ行くとなると、どうしても億劫になってしまう。
タクシーを呼んで移動しようとすれば、ノースエリア入り口のゲートの解除を係員に連絡しないと頼んだタクシーがエリア内に入ってこれない。
その手続きがいちいちめんどくさいのだ。
——セキュリティーが充実しすぎているのも考えものねぇ……
小笠原はマイカー通勤なので、わたしも運転免許を取って自分自身で運転しようと思ったけれども……
小笠原から『創業家の君が事故でも起こして新聞や週刊誌が嗅ぎつけたら、うちの株価が大暴落する』と猛反対された。
——運動神経は決して悪い方ではないのに、失礼ね!
なので、今のわたしは「引きこもりニート」状態だ。
とりあえず、暇つぶしにこの洋館や祖母が愛したお庭の写真をバチバチ撮っている。
『——レイカ、もしかして……
お湯で温めるだけのレトルト食品を、大事なダンナさまに食べさせてるんじゃないでしょうね?』
母がまるで地獄の底から迫り上がってきたような低ーい声で訊いてきた。
——なんだか、デジャヴ?
先刻、テンシがこんな声を出していたなぁ……