フェイク☆マリッジ 〜ただいまセレブな街で偽装結婚しています!〜 【Berry’s Cafe Edition】

自分でつくって言うのもなんだけど……

サンデーローストには、ジューシーな肉汁を元にしてつくったグレイビーソースをたっぷりとかけておいた。

なので、シズル感が半端ない!

ほんとにめちゃくちゃ美味(おい)しそうだから、先刻(さっき)スマホで写真をバチバチ撮ったくらいだ。

祖母のレシピがあって、そのとおりにしたからとは言え、ほとんど初めて料理したとは思えない素晴らしい出来栄えだ。

——やっぱりわたしも、おばあちゃまやママの遺伝子(DNA)を受け継いでいる、ってことよね……


「——なんや、この味……」

真顔になった小笠原のイントネーションが「大阪」になっている。

まさかわたしがここまで料理ができるとは、夢にも思っていなかったのだろう。

「どーお? わたしがつくった料理のお味は?」

——ほらっ、美味しいなら美味しいと、素直に言いなさいよ!


しかし小笠原は何も答えず、今度は茹でたブロッコリーやローストしたジャガイモにナイフを入れて、次々と口の中へ入れていく。

そのあと、ヨークシャープディングもフォークで(すく)って口に入れる。

「プディング」と言っても日本の人がイメージするあの甘い「プリン」ではない。

むしろ茶碗蒸しに近い感覚だから、あくまでも「おかず」の味なのだ。

小笠原はフォークとナイフを置くと、ようやくつぶやいた。


「——どれもこれも、こんなにクソ不味(まず)いのに……
なんで、奇跡的に美味しそうに見えるねん?」
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