フェイク☆マリッジ 〜ただいまセレブな街で偽装結婚しています!〜 【Berry’s Cafe Edition】

「ちょ、ちょ、ちょっとぉっ、なんですってぇっ⁉︎」

思いがけない「辛口」批評に、わたしの声がひっくり返った。

しかし、そんなわたしに構うことことなく、小笠原はさらに続ける。

「ローストビーフとヨークシャープディングは、買ってきたものをそのまま並べたな?」

言葉は標準語に戻っていた。

——ど、どうしてそれを……⁉︎

Taishoya(スーパー)の店員が、真空パックに入っていてすでに薄くスライスされたローストビーフと、カップに入って冷凍(チルド)されたヨークシャープディングを「お手軽でとても美味しいですよ」とオススメしてくれたのだ。

「ローストビーフはともかく、チルドされていたであろうプディングの中はまだ冷たい」

「えっ、オーブンでちゃんと焼き色を付けたわよ?」

「冷凍食品は電子レンジを使うほうが確実だ。
しっかり解凍したあと、焼き色を付けるためにオーブンに入れるんだ。
わざわざオーブンでなくても、オーブントースターでもいいくらいだがな」

——えっ、そうなの……⁉︎

「ブロッコリーはいつものレトルト食品を湯で温める要領で茹でたんだろうが、彩りはともかく芯がまだ固い。
ローストポテトも表面は焦げ目が付いているが、中はガリっとして生焼けだ。
プディングといっしょにオーブンに放り込んだんだと思われるが、こんなに火が通っていないということは、そもそも予熱時間が足りなかったんだろう。
庫内がしっかり温まる時間はそれぞれのオーブンで異なるからな」

——うっ……すべて図星だ……


「そして、なんといっても強烈に不味かったのが…… グレイビーソースだ」

「ひ、ひどいわっ!」

今までのは確かにわたしの「調理ミス」だけど、このソースは……

「あ、あなたに、おばあちゃまのグレイビーソースの味を侮辱されたくないわ!」

祖母のレシピノートどおりの味なのだ。

まさに——「祖母の味」への冒涜だ。


「ところで、君は……味見をしたのか?」
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