フェイク☆マリッジ 〜ただいまセレブな街で偽装結婚しています!〜 【Berry’s Cafe Edition】
裏庭の水遣りを終えたわたしは、玄関先から門扉にかけてのアプローチに置かれたジューンベリーの鉢植えにたっぷりと水を遣り始めた。
鉢が根詰まりするほど大きく育てば地植えにする予定の樹木だ。
そうなればもう水遣りは要らない。
ジューンベリーに向けたホースから出る水が放物線を描き、キラキラと七色の虹をつくる。
放たれた水を浴びた葉の表面にいくつもの雫ができ、太陽の光に照らされてみずみずしく輝く。
北米原産のジューンベリーは春に少しピンクがかった白い花が咲くことから、同じバラ科のサクラの花にとても似ている。
知らない人はサクラと見間違うらしい。
花が散って新緑の初夏になると「六月の果実」と呼ばれる所以どおり、もう真っ赤な実をつける。
それが、ほとんど実を結ぶことのない国産のソメイヨシノなどとの違いだ。
その後はサクラと同じく広葉樹のため、秋が深まると紅葉し、冬になれば一気に落葉する。
そして、春を迎える頃に芽吹いて葉となり——季節は巡る。
これらは、すべて「造園業者の受け売り」なんだけれども……