この空を羽ばたく鳥のように。
なっ!……な、ん、だ、とお~~~っ!?
おのれ喜代美め、バラしたなあ!? 私の努力を、あっさりと無にしおって~~!!
拳をきつく握りしめる。手がわなわなと震える。
帰ってきたらどう料理してやろうかと、怒り心頭で顔が険しくなる私に、八郎さまはあわてて執り成すように言葉を添えた。
「さよりどの、落ち着いて下さい。まだ続きがあるのです」
喜代美は私の地味さを、こんなふうに評価して言ったのだそうだ。
『着飾ることなど、普段の生活に何の必要がありましょうや。武家では質素倹約は当たり前のこと。
姉上はあまり自分のことには構いませんが、家の仕事を手際よくこなしますし、よく働きます。
それに心根がとてもまっすぐで、気取ったところも嘘もまったくありません。
私はそれで充分だと思いますし、何より自慢に思うのです』と。
(……へ、へえ。喜代美がそんなことを?)
沸き上がった怒りが、みるみる萎んでいく。
その様子を見て、八郎さまは安心したように目を細めた。
「先ほどから拝見していて、私もそう思いました。
喜代美はあなたをとてもよく慕っておるようです。ですから叱らないでやって下さい」
八郎さまは気の毒だと思ったのか、弟を庇ってやんわりとおっしゃる。
決まり悪いとうろたえつつも、私は反論した。
「はあ……ありがとうございます。ですが、それは買いかぶりです。私だって嘘はつきます」
「そうですか?なら何故あなたは今の姿を取り繕うこともせず、これが本来の自分だと正直に打ち明けたのですか?」
指摘されて、うっ……と、顔をしかめる。
「それは……それは、八郎さまが現れたのがあまりに突然だったもので、取り繕う策が浮かんでこなかっただけです!
それに姉さまや友人の前でみえすいた嘘をついても、どうせバレると思ったし……」
もごもごと言う私に、
「そうですか?」と、八郎さまは笑う。
何もかもが見透かされているよう。
みどり姉さまは私の言葉遣いの悪さに、
「まあ……さよりったら!」と、八郎さまの後ろから眉をひそめて睨んでいた。
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