今夜、色のない君と。



絵の中にいた花夜は、当然ながら秋野さんを知っていた。


…当然ながらってのも変だけど。



「秋野さん、いつもお花に向かって話しかけてました。『お花ちゃん、お花ちゃん』って言って」


「………そうなんだ」



お花に愛情かけすぎでしょ秋野さん。


まあそういうとこが好きでもあるんだけどさ。



「それで、お花がどうかしたんですか?」


「……ああ、花夜って名前には、その花っていう漢字が使われてるんだよ。花夜の“か”が花で、“や”が夜。夜っていうのは、今みたいに店の外が真っ暗な状態のことね」



そう言って僕は、近くの窓のカーテンを開け、外を指さした。


さっきまで少し明るかった空は、今はもう真っ暗だった。



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