今夜、色のない君と。


僕がそう言うと、やっぱりまたニコニコしている。



…何がそんなに面白いんだろうか。



っていうか、そんなに笑顔になられるとその笑顔がうつっちゃうんだけど。



「……あ!緒都くんも今ニコッてした!」


「してないよ」


「してましたよ!私見たもん!」


「してません」



そう否定しても疑いの目を向けてくるので、もう一度「絶対してない」と言っておいた。



それでも花夜は「してた」と言ってくる。



このやり取りは永遠にループするパターンなので、僕は本棚の本を一冊手に取って、



「そんなことより花夜、今まで“色”っていうのを見たことないでしょ」


「あ、はい。絵の中にいた時はこっちの世界も色がないように見えていたので」



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