剣に願いを、掌に口づけを―最高位の上官による揺るぎない恋着―
 セドリックの死から二年の歳月が流れ、セシリアがルディガーやスヴェンに会う機会はほとんどなくなった。互いに忙しくなったうえ活動拠点も違う。

 セシリアが久しぶりに彼らの目の前に現れたとき、彼らは幼い頃からよく見知った彼女を複雑な面持ちで見つめた。

 これがまだ家の近くで会ったのなら、世間話のひとつに花でも咲かせられたかもしれない。しかし、ここはアルント城にあるアルノー夜警団専用の部屋だ。

 通常、一般市民は立ち入ることはできない。

 質素な涸れた土色の制服には見覚えがあり、今セシリアはそれを身に纏っている。長かった金色の髪は肩上で切りそろえられ、毛先が揺れた。

 セシリアはまっすぐにふたりに視線を向ける。

「改めましてセシリア・トロイです。一年の准団員期間を無事に終え、正式には明日からになりますが、おふたりの副官として任を拝命いたしました」

 セシリアは准団員期間、どの分野においても優秀さを示してきた。とはいえ新人としては破格の扱いだ。

 他の団員としては、思うところがあってもアードラーの娘であり、彼らの副官を務めていたセドリックの妹として溜飲を下げるしかない。

 セシリア自身、周りに色眼鏡で見られるのは十分に承知している。ましてや自分は女だ。けれど入団する前からずっと希望していた立場だった。

 父ヴァンは、セドリックの件がありセシリアの夜警団の入団を強く反対すると思われたが、逆に『お前の好きに生きればいい』とセシリアの意志を尊重した。

 祖母のベティだけはセシリアの入団を泣いて反対したが、最後は渋々折れた。

 スヴェンとルディガーの反応からしても、誰もがセシリアの入団を、ここに立っているのを喜んではいない。だとして、誰かのために決意して行動したわけじゃない。すべてはセシリア自身が決めたことだ。
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