剣に願いを、掌に口づけを―最高位の上官による揺るぎない恋着―
 重々しい口を先に開いたのはルディガーだった。

「本気、なのか?」

「ええ。使えないと思ったら、どうぞすぐに任を解いてください」

 セシリアはしれっと返す。セドリックが亡くなった後、彼らは決まった副官をつけなかった。とはいえ位が上がっていけば、必然的に抱える部下も仕事も増えていく。

 スヴェンやルディガーは今や小隊をまとめた分団の長にまでなっていた。やきもきしたのは周りで、セシリアの配属希望が叶ったのは「やれるものならやってみろ」というのもあったのかもしれない。

 ルディガーは納得できずに説得口調になる。

「この仕事は血生臭いことも多い。人間の嫌な面を見るし、下手すれば命を落とす可能性もある。それに女性は特に……」

「覚悟しています」

 遮った言葉は力強く、揺るぎがない。なによりセシリアの瞳は真剣そのものだ。これ以上はなにを言っても無駄だと先に悟ったのはスヴェンだ。

「俺に副官は必要ない。セドリックも基本、ルディガーについていたしな」

 言い捨て、おもむろに部屋を出て行こうとするスヴェンにセシリアが声をかける。

「なにかあればなんなりと仰ってください」

 スヴェンの性格も熟知しているので無理強いはしない。実力と必要さえあれば彼が私情を挟まず、自分を使うのも理解していた。

「わかった。また声をかける」

 短く答えてスヴェンは部屋を出て行った。部屋にはルディガーとセシリアふたりになる。
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